厚生労働省の調査によれば、現在の仕事や職業生活において、強い不安や悩み、ストレスに感じる事柄がある労働者の割合は、82.2%となっています。(※
厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」より)
また、「労働安全衛生法」の改正により、2015年12月には労働者数50人以上の事業所では毎年1回ストレスチェックをすることが義務づけられました。
こうした実態からしても、企業における、従業員のストレスケアに対する責任は大きくなっていると言えます。企業の生産性を向上させるためには、従業員のストレスを軽減し働きやすい職場づくりを行うことが重要になってきているのです。
とはいえ、ストレスとは何なのか、どのような不調が起こるのか、予防・解消のために何をすればよいかよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ストレスの原因や症状、解消のためのポイントについて紹介します。
この記事のポイント
- ストレスとは、「外部からの刺激などによって体の内部や心に生じる反応」のこと。
- ストレス反応は心理面、身体面、行動面の3つに現れる。
- つらいことだけでなく良い変化もストレスの原因となり得る。
- ストレスの症状や変化に早めに気づき、対処することが重要。
- ストレスには本人が気づきにくい側面があるので、周囲からの働きかけが有効な場合がある。
1. ストレスとは?
「厚生労働省e-ヘルスネット」の「ストレス」の項目の説明によると、ストレスとは「外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと」を言います。ストレス反応を引き起こす外部からの刺激のことをストレッサーと呼びますが、多くの場合は、ストレッサーとストレス反応を合わせて「ストレス」と表現します。
ストレッサーとは
ストレッサーはストレスの原因となる刺激のことです。ストレス反応を引き起こすストレッサーは非常に幅広く、さまざまな刺激が含まれます。ストレッサーには、温度、騒音、光などによる物理的なもの、タバコの煙や食品添加物・公害物質などによる化学的なもの、家庭内も含めた社会生活上の人間関係やその中で生じる問題などによる心理的・社会的なものなどがあります。
これらのストレッサーによって刺激を受けることで生じる、身体的および心理的な面で発生する症状を「ストレス反応」と呼んでいます。
2. ストレス反応の種類
ストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに現れるとされています。
心理面のストレス反応としては、活力・意欲や集中力の低下、イライラ、不安や抑うつなどが挙げられます。身体面でのストレス反応としては、頭痛や肩こり、めまい、動悸、食欲低下、便秘、下痢、不眠などがあります。また、行動面のストレス反応は、お酒やタバコの量が増える、食欲の極度の増加、自動車の運転が荒くなる、ヒヤリハットの増加などといった反応が見られるようになります。
3. ストレスの原因
ストレスの原因はさまざまあります。職場や家庭などの人間関係や環境、病気や睡眠不足などもストレスとなることがあります。
社会生活の中では、他の人との関わりを避けて通ることができません。良好な人間関係はストレス解消に役立ちますが、うまくいかない場合はストレス反応を引き起こす場合があります。親子や夫婦関係でうまくいっていない場合なども同様です。
また、職場環境や働き方、評価に対するプレッシャーなどもストレスとなり得ます。充分な睡眠がとれていない、健康診断の結果に問題があったなど健康面によってストレス反応が起こる場合もあるでしょう。借金をした、ローンを組んだなど経済面の不安がストレスの原因となる場合もあります。
ストレスの原因はつらい出来事だけではない
ストレスの原因となるのはつらい出来事だけではありません。昇進や結婚などといったおめでたいことでも大きな環境の変化をともなうため、ストレスの原因となる場合があります。そのため、ストレスとなっていることに自分で気がつかない場合も少なくありません。
また、ストレスの原因が重なる場合もあります。職場環境だけではなく、健康面、家庭環境など、さまざまな原因に基づく複合的なストレスが生じている場合は、大きな負担になりやすいものです。
4. ストレスの症状
ストレスがかかると、心や体にさまざまな症状が現れます。ストレスの症状の代表的なものは次のとおりです。
- 落ち込みや憂鬱な気分
- 好きなことが楽しめない、やる気が出ない
- 集中力の低下
- 不安感、焦燥感、イライラなど
- 寝つきが悪い
- 物ごとを悪い方に考える
- 自分を価値のない人間だと思う
また、ストレスは心だけではなく、呼吸器系、循環器系、消化器系などの部位に身体面の症状を引き起こす場合もあります。身体面の症状は、ストレスだけが原因とは限らないため、原因が他にあるのか見極める必要があります。
つらい症状が継続する場合は医療機関の受診も必要
ストレスによって起こる症状が長期間継続する場合は、医療機関を受診することも検討しましょう。「疲れているのに眠れない」など自分でストレスに気づくケースもありますが、ストレスによる症状が出ている時には前向きに受診を検討するのが難しい場合もあります。そのため、周囲の気づきや声かけが受診のきっかけになり得ます。
周囲の人が気づく業務中の変化としては、「遅刻や早退が増える」「業務に集中できていない」「できていたルーティンワークに難渋している」などが挙げられます。また、業務時間外においても、「特に理由なく退職を訴える」「お酒の量が増える」「周りとの付き合いを避ける」といった変化は、受診を促すべき兆候といえます。
ストレスによって疾患を発症してしまうと、回復までに長い時間がかかります。ストレスのサインとなるこれらの変化について知っておき、早めに専門家への相談を薦めるなどの対応を行うことが重要です。
5. 職場のストレスの予防や発散方法
ストレスの予防には、ストレスと上手に付き合い、日常生活の中でストレスをためないように行動をすることが大切です。職場のストレスも放置すると、従業員の生産性の低下や休職、離職などにつながり、経営に影響を及ぼしてしまう可能性もあります。
「労働安全衛生法」によって義務づけられている年1回のストレスチェックの実施はもちろんのこと、ストレスを予防・発散できる環境をつくり、日常的に従業員と共有・実践していくことが求められます。
ストレスを予防するための環境づくりの一例として以下のような方法が考えられます。
- 定期的な対話の実施
- メンタルヘルス研修の実施
- 人員配置の見直し
- ストレスチェックの実施
1on1など定期的に対話をする機会を設けることは、ストレスに気づきやすくなり、その原因に直接働きかけることもできます。たとえば、長時間労働がストレスの原因になっていると気づくことができれば、業務量の調整や進め方の指導などの対応をとって、ストレスを軽減することができるのです。
また、メンタルヘルス研修によって、従業員にメンタルヘルスの重要性を理解してもらうことで、社内の意識を高めることができ、定期的に人員配置を見直すことで、適材適所な配置をしていくこともストレス予防につなげることができます。
環境づくりと合わせて、定期的なストレスチェックにより、ストレスの予防・発散ができているかチェックすることも必要になるでしょう。
ストレスの「見える化」で気づきを促す
ストレスは目に見えるものではありませんので、気がつきにくく、早期対応が難しかったり、原因がわからない不調に悩まされたりするケースが多くあります。
上記例を参考に環境を構築し、ストレスチェックの結果を改善の指標として活用していくのも良い方法でしょう。
6. まとめ
ストレスは生活するうえでは、避けては通れないものです。厚生労働省の調査においても、ストレスに感じる事柄がある労働者は数多くいることがわかっています。ここまで述べてきたように、ストレスを抱えている従業員は仕事にも影響を与えます。企業経営や職場管理者が、ストレスに関する正しい知識を身につけるとともに、従業員のストレスに気づき、早めに対処していくことが重要になっています。
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疲労ストレス計で従業員の「疲労・ストレス度」を把握することで、ストレスに悩む従業員に対して早めに声がけをしたり、専門の医療機関の受診を促すなどの対応をすることができます。これにより、業務の生産性の低下、休職や離職などの予防にもつながるといった効果が期待できます。
また、従業員とも疲労ストレス計のデータを元にこまめにコミュニケーションをとることで、健康に対する企業の取り組みについても、理解や関心を深めていくアプローチができるでしょう。