メンタルヘルスとは?不調の要因やサイン、ケアの方法を解説

職場で役立つ疲労とストレスコラム

現代の職場では、多くの労働者が深刻な不安や悩み、ストレスを抱えています。これらはメンタルヘルスの問題として現れ、仕事や生活全般に影響を及ぼすことがあります。メンタルヘルスのケアを怠ると、生産性の低下、職場の人間関係の悪化、退職や休職などの問題が発生する可能性があります。企業は、このような状況に対する適切な対策を講じることが求められているのです。
メンタルヘルスの問題の症状とその原因について簡単に触れ、対策について詳しく解説します。
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この記事のポイント

  • メンタルヘルスとは心の健康を指す言葉。過度の疲労やストレスはメンタルヘルスを危険にさらす。
  • メンタルヘルス不調とは心の健康が乱れ、睡眠不足や食欲不振、強い疲労感などの症状が現れる状態。
  • 良好なメンタルヘルスは生産性を向上させ、リスクを低減し、従業員の健康と幸福の維持につながる。
  • メンタルヘルス対策は3本の柱と、4つのケアで実践する。

1. メンタルヘルスとは?

メンタルヘルスは、心の健康、つまり精神的な健康を指す言葉です。世界保健機関(WHO)では「すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処し、生産的かつ効果的に働き、コミュニティに貢献することができる健全な状態」と定義しています(出典:日本看護協会「所信声明」)。これには、自分の感情を適切にコントロールする能力、ストレスに対する適切な対応力(レジリエンス)、人間関係を円滑に保つコミュニケーションスキルなどが含まれます。

長時間労働、人間関係からくるストレス、適切な休息やリラクゼーションの欠如などの過度な疲れやストレスは、メンタルヘルスの問題を引き起こすおそれがあります。

2. メンタルヘルスの現状

厚生労働省が2024年に公表した「職場におけるメンタルヘルス対策の現状等)」によると、精神障害の労災認定件数は、2002年から2022年の間に7倍以上になりました。それに伴い、傷病手当金における精神障害等が占める割合は年々増え、1995年は1割以下でしたが、2019年には3割を超えました。近年はメンタルヘルス不調が原因で、休業または退職する労働者がいる事業所が増加傾向にあります。
このようなことから、メンタルヘルス不調のサインを見逃さず、適切・迅速に対応することが重要です。

3. メンタルヘルス不調とは心の健康が乱れた状態

メンタルヘルス不調とは「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」(厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」より引用)をいいます。どのような症状で、何が要因となっているのか、また兆候はどんな形で現れるのか解説します。

メンタルヘルス不調の症状

  • 睡眠障害
  • 不安・抑うつ
  • 食欲不振
  • 強い疲労感など

これらがメンタルヘルス不調でよく見られる症状です。ストレスによって不安や恐怖を感じると交感神経が優位になるため、動悸、口渇、息苦しさ、肩こりといった身体症状として現れることがあります。

メンタルヘルス不調の要因

厚生労働省の令和5年版過労死等防止対策白書 第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況「2. 職場におけるメンタルヘルス対策の状況」(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP))によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」と回答した労働者の割合は、令和4年(2022年)で82.2%でした。その内訳は次の通りです。

  • 仕事の量や質
  • 仕事の失敗や責任の発生
  • 対人関係(セクハラ・パワハラを含む)
  • 会社の将来性など

メンタルヘルス不調は単一の要因で起きることはまれで、多くはいくつかの要因が複合して起こります。

メンタルヘルス不調のサイン・兆候

  • 遅刻や早退、欠勤が増えている
  • 顔色や表情がさえない
  • いつも眠そうな様子である
  • 食欲がない様子である
  • ミスが増えている
  • 身だしなみが乱れてきているなど

上記のような変化が見られたら、メンタルヘルス不調のサインの可能性があります。今までなかったような様子に気づいたら、速やかに体調を確認する声かけを行い、何か困っていることはないか、じっくり話を聞くことが大切です。話を聞く際には、話し手に思い込みなどがあったとしても否定せずに、まずは「あなたの話が聴きたい」ことを伝えると、話すだけでもストレス軽減になるものです。忙しさを理由に声かけを先送りしている間に病状が悪化すると、その後の対応により多くの時間が必要になります。

4. メンタルヘルスケアの重要性

厚生労働省が発行する冊子『職場における心の健康づくり』の「労働者の心の健康に関する現状」に、「業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症し、あるいは自殺したとして労災認定が行われる事案が近年増加し、社会的にも関心を集めています。」とあるように、近年、メンタルヘルスケアへの社会的関心は高くなっています。メンタルヘルスケアとは、「全ての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすること、およびそのような活動が円滑に実践されるような仕組みを作り、実践すること」です(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「3 メンタルヘルスケアとその実践の意義」より引用)。
職場でのメンタルヘルスケアの重要性は以下のような点になります。

(1)生産性向上のため

メンタルヘルスが良好な状態であれば、従業員の仕事の効率やクオリティが向上します。逆に、メンタルヘルスが不調であれば、仕事のパフォーマンスが低下し組織全体の生産性に影響を及ぼします。

(2)持続的な事業運営、成長のため

従業員一人ひとりが心身ともに健康であり、それぞれがメンタルヘルスに関しての基本的な知識を持ち、相互に実践していく仕組みを作ることは、持続的な事業運営を可能にし、事業の成長にもつながります。

(3)リスクへの対策のため

メンタルヘルスの不調からくる作業ミスは、思わぬ重大事に発展する可能性も含んでいます。また、メンタルヘルスの不調に起因する休職や離職が増加すれば、事業運営に影響が出るだけでなく、従業員の健康管理に問題がある企業と見られてしまいます。そういったリスクへの対策のひとつとしても、メンタルヘルスケアに取り組むことは重要といえます。

では、メンタルヘルスケアに取り組むためにはどのような対策が必要なのでしょうか。

5. メンタルヘルス対策の方法

厚生労働省は、メンタルヘルス対策のポイントとして、「3本の柱」と「4つのケア」を実施することが重要と伝えています。メンタルヘルス対策は、職場におけるメンタルヘルスケアを効果的に推進するための取り組みのことです。

3本の柱とは

「3本の柱」では、メンタルヘルス対策を目的別に三段階に分類しています。それぞれ以下に紹介します。

  • 一次予防:未然に防ぐ
    従業員向けのストレスマネジメント研修や情報提供を実施し、従業員の理解と意識を高めます。また、過重労働やパワハラなどの状況把握と改善などを実施します。
  • 二次予防:早期発見と適切な対応
    上司への相談機会の設置や、産業保健スタッフなどと相談できる窓口の設置など、従業員が気軽に相談できる環境を整備し、メンタルヘルス不調を早期に発見します。
  • 三次予防:職場復帰支援
    メンタルヘルス不調と診断され、休業している従業員の復帰を支援するための取り組みで、職場復帰支援プログラムの策定や実施、復帰後のフォローアップなどを行います。主治医とも連携しながら慎重に取り組む必要があります。

4つのケアとは

「3本の柱」に分類されるそれぞれの予防策を実行する際は、厚生労働省が指針として示している「4つのケア」を用いて、継続的かつ計画的に行うのが理想的です。

  • セルフケア
    管理職も含め、従業員自身が自分のメンタルヘルスを管理するための取り組みです。ストレスマネジメント研修の実施による理解の促進や、自己チェックツールを導入し、活用を促します。
  • ラインによるケア
    管理職が部下のメンタルヘルスを支援するための取り組みです。管理者自身がメンタルヘルスへの理解を深めるため、メンタルヘルス研修を受講したり、部下とのコミュニケーションによってメンタルヘルス不調にいちはやく気づけるように行動したりすることなどが必要になります。
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
    産業医や保健師などの専門家が従業員のメンタルヘルスを支援するための取り組みです。メンタルヘルスに関する相談対応や、復職支援プログラムなどを企画、実施します。
  • 事業場外資源によるケア
    事業場外の機関や専門家が従業員のメンタルヘルスを支援するための取り組みです。専門的なカウンセリングを受けられるように外部の専門家と連携し、情報共有や助言、治療などを行います。

以上のように、メンタルヘルス対策はポイントを抑えながら、計画的に実行していくことが必要となります。従業員とも対話を重ねながら進めていくとよいでしょう。

やっておきたいメンタルヘルス対策

1)ストレスチェック
ストレスチェックとは、自分のストレスがどのような状態にあるかを調べる簡単な検査です。メンタルヘルス不調の一次予防として、事業者にとっても、従業員のメンタル不調を未然に防ぐことができ、職場環境の改善に役立ちます。2015年からは労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を主な目的として、従業員50人以上の事業所でストレスチェック制度の導入が義務化されました。(参照:厚生労働省 ストレスチェック制度導入ガイド 2016年4月公表

2)労働環境を改善する
職場のストレスチェック結果の集団分析を行い、労働環境の改善につなげることができると、従業員のストレス改善および生産性の向上に効果があることが分かっています。

これまで国内の活動で蓄積された労働環境の改善対策を見ると、勤務分担のあり方、勤務時間制、作業組織、人間工学対策、物理的環境、社会心理要因などがあります。職場環境の改善といえば、人間関係や個人のストレス対策ばかりに目が行きがちです。しかし実際は「ノー残業を設ける」「毎朝の定例会議を設けた」「係長クラスへ裁量権を一部移譲し、業務の効率化を図った」「応接スペースの灰皿を撤去した」「台車を導入して重量物の移動を楽にした」など、多方面からのアプローチでストレスが軽減し、労働環境の改善に役立ったという報告があります。(参照:厚生労働省 こころの耳「職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」「ヒント集を用いた職場環境等の改善マニュアル」)

労働環境を改善した具体例を一つ紹介します。ある職場では横の連携が悪く、同職場内で仕事の重複が発生するなど無駄が多かったので、連携を強めるために週一の朝礼をすることにしました。その結果、重複作業などの無駄が減りました。(参照:厚生労働省 こころの耳「職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」「ヒント集を用いた職場環境等の改善マニュアル」)

労働環境改善の計画立案を主体が誰かによって、次のように大きく3つの方式に分けられます。

左右にスワイプ可能です。横持ちでご覧ください。
それぞれの方式についてのメリットデメリット
①経営層主導型 ②管理監督者主導型 ③従業員参加型
特徴 集団分析の結果をもとに、経営層が事業場全体としての対策を進める職場環境改善です。 部署ごとの集団分析結果をもとに、管理監督者が対策を進める職場環境改善です。 各部署で働く従業員が、対策の立案や計画の策定に主体的に参加する職場環境改善です。
実施に向いている職場 課題が明確で、経営層が明確な方針を指示することができる場合。 課題が部署ごとで異なる場合。管理監督者が職場環境改善に取り組む意欲を持っている場合。 問題を皆で解決しようという雰囲気がある部署。多忙すぎる部署、人間関係に明らかな問題がある部署では実施が難しい場合があります。
メリット 労働時間削減、人員配置など事業場全体としての取り組みが必要な場合に有効です。 管理監督者の自主性を引き出し、部署ごとの特徴を反映した対策が実施できます。 従業員の意見を反映することにより、きめ細かい対策が実施できます。従業員同士のコミュニケーションも改善します。
デメリット 部署ごとの事業内容や課題の特徴を反映した対策にならない場合があります。 管理監督者の権限を越えた対策は実施できません。管理監督者の独りよがりな対策にならないように工夫が必要です(産業保健スタッフ、従業員の意見を聞く等)。 従業員参加での意見交換会を開催する必要があります。対策は、部署内での改善に限定されます。

(引用:独立行政法人労働者健康安全機構、厚生労働省 「これからはじめる職場環境改善 ~スタートのための手引き~ 改善主導型別にみた職場環境改善の3つの方式

6. メンタルヘルス対策を行う際の注意点

メンタルヘルス対策を行うにあたっては、いくつかの注意点があります。

個人情報の保護を徹底する

メンタルヘルス対策は診断書も含めて心の健康に関わる個人情報であるため、取り扱いには細心の注意を払い、情報を適切に管理しなければなりません。また、個人情報の共有・収集は、原則としてすべて本人の同意が必要であること、個人情報を扱う者の守秘義務を徹底することが必要です。

不利益な取り扱いをしない

事業者が従業員の心の健康に関する情報を把握した場合に、その従業員に対して不当な取り扱いをすることは禁止されています。次のような行為は、従業員に対する不利益な取り扱いにあたります。

  1. 解雇すること。
  2. 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。
  3. 退職勧奨を行うこと。
  4. 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること。
  5. その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

(出典:厚生労働省 労働者の心の健康の保持増進のための指針 「8 心の健康に関する情報を理由とした不利益な取扱いの防止 (1)事業者による労働者に対する不利益取扱いの防止」より引用)

職種・業種に応じた対策を取る

ストレスやメンタルヘルス不調の要因は、職種や業種によって異なります。そこでそれぞれの職場の特性に応じて、メンタルヘルス対策に取り組むことが必要です。取り組みのポイントは、似た職種・業種の取り組み例を参考にするとよいでしょう。

7. まとめ

メンタルヘルスの不調は、生産性低下を引き起こし、業務上の事故やトラブル発生のリスクを高めます。メンタルヘルスケアに取り組んで職場環境の改善を行うと、従業員のストレスとリスクの軽減が可能です。またこの取り組みによって職場の問題点が把握でき、職場改善の具体的な検討がしやすくなります。職場の改善が進むと、生産性の向上など経営面で良い効果が期待できます。
ストレス度チェックにはストレスチェック調査票のほか、短時間でストレス度を客観的に評価できるツールもあります。

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