従業員のストレスによる退職を防ぐための対処法とは?原因やサインも解説

職場で役立つ疲労とストレスコラム

厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」が上位に入っています(「個人的理由」や「定年・契約期間の満了」を除く)。これは、人間関係や労働環境のストレスが離職の要因となる可能性があることを示しています。また、同時に職場内でストレス対策ができていなかったことが考えられるでしょう。
本記事では、従業員のストレスによる退職を防ぐために、人事担当者が実施できる取り組みについて詳しく解説します。
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この記事のポイント

  • 仕事や職業生活でストレスを感じることがあると回答した労働者の割合は82.7%。
  • 厚生労働省の調査により職場の人間関係や仕事への向き合い方がストレスとなって離職に影響することが推察される。
  • ストレス対策の一環として、ストレスを溜めやすい従業員の特徴や、ストレスが溜まっているときのサインを理解することが重要である。
  • ストレスチェックを有効活用し、ストレスの度合いを可視化できる仕組みづくりが求められる。

1. 従業員の退職を防ぐストレス対策の必要性

企業にとってストレス対策は、従業員の健康と安全を守るための重要な取り組みです。ストレスは従業員の心身に影響を与え、仕事のモチベーションやパフォーマンスの低下、人材流出やそれによる在籍従業員への負担増、企業ブランドの低下など、さまざまな経営上のデメリットを生みます。

厚生労働省の「令和5年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によると、仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある労働者の割合は82.7%に上っています。また、メンタルヘルス不調によって、連続1か月以上休職した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%になっています。

ストレス耐性には個人差があり、従業員の心身の不調に気づかないまま、組織の生産性が落ちている可能性があります。そのため、従業員のストレス対策については組織全体で取り組むことが必要不可欠です。

2. 従業員が抱えるストレスの原因とは?

ストレスを感じる主な内容は、「仕事の失敗、責任の発生等」「仕事の量」「仕事の質」「対人関係」などが挙げられています。ここではストレスの要因を労働条件や労働時間などの労働環境と人間関係の側面から、説明します。

仕事の失敗、責任の発生等

厚生労働省の「令和5年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によると、39.7%の労働者が「仕事の失敗、責任の発生等」による不安やストレスを抱えていることが判明しました。特に責任感が強い人ほど、仕事にプレッシャーを感じ、強いストレスを感じるケースがあります。仕事のクオリティや成果によって、収入や上司の評価が変わることに不安を覚え、精神的な負担になることもあるでしょう。

仕事の量

仕事量が多くなると、仕事とプライベートのバランスが取りづらくなり、ストレスが溜まる原因になります。厚生労働省の同調査では、39.4%の労働者が「仕事の量」による不安やストレスを抱えていることがわかっています。特定の従業員に仕事の負担がかかると、チーム全体の生産性が下がります。

仕事の質

「仕事の質」による不安やストレスを抱えている労働者が27.3%いることが、厚生労働省の同調査によりわかっています。特に、仕事の経験や知識が少ない従業員の場合、仕事の質を確保しようと努力し、自分を追い込んでしまうことがあります。

対人関係(セクハラ・パワハラを含む)

厚生労働省の同調査によると、29.6%の労働者が「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」による不安やストレスを抱えていることがわかっています。特に、コミュニケーション不足やハラスメントによって関係性が悪化する可能性があります。

顧客、取引先等からのクレーム

厚生労働省の調査によると、26.6%の労働者が「顧客、取引先等からのクレーム」による不安やストレスを抱えていることがわかっています。従業員のスキル不足以外にも、理不尽なクレームやカスタマーハラスメントによってクレームが発生するケースもあります。強いストレスを抱えてしまう従業員も少なくありません。

3. 従業員のストレスを見抜くには?

従業員がストレスを抱えているかどうかを見抜くために、対象者の特徴やストレスのサインを知っておくことが大切です。

ストレスを溜めやすい従業員の特徴

ストレスを溜めやすい従業員の特徴としては、以下が挙げられます。

  • 完璧主義の人
  • 断れない人
  • 心配性な人
  • 環境の変化があった人

完璧主義の人は仕事上でミスが出ないよう、常に緊張感を持って取り組むため、精神的な負荷を感じやすくなります。また、周りからの頼みや依頼を断れない人は、無理をして自分を追い込むことが多いでしょう。心配性な人の場合、同僚や上司の意向を過度に気にする傾向があり、疲れが出やすくなります。また、異動や転勤などで環境の変化があった人は、新しいことの連続でストレスを感じやすくなることもあります。

ストレスが溜まっているサイン

ストレスのサインは「心理面」「行動面」「身体面」から汲み取ることができます。詳細はこちらの記事をご確認ください。

「心理面」「身体面」に関しては、従業員自身で気づく変化ですが、「行動面」に関しては、周囲の人でも気づける変化になります。企業としてもストレスサインとしてどのような行動の変化が表れるのか、注視する必要があります。

[心]

  • 憂鬱である
  • 不安である
  • イライラする
  • 気分が重い
  • 集中できない
  • 好きなこともやりたくない

[体]

  • 眠れない
  • 体がだるい
  • 頭痛がする
  • 腹痛がある
  • 動悸がする
  • 疲れやすい

[行動]

  • 表情が暗い
  • 落ち着きがない
  • 遅刻や欠勤をする
  • ギャンブルにのめり込む
  • 過度の飲酒や喫煙習慣がある

ストレスのサインを見逃して対処が遅れてしまうと、従業員はうつ病や不安障害などを引き起こす可能性があります。また、仕事の生産性が低下し、職場や企業の業績に影響が出てしまうケースもあります。該当する従業員がいる場合は、個人面談の機会を設けて話を聞くことから始めましょう。ストレスの原因が職場にある場合は解決できるよう、サポートすることが重要です。

また、ストレスを本人が自覚することは難しく、専門家以外でも判断することが困難です。対象者のストレス度合いに関して、本人または第三者がストレスの程度を知るためにも、ストレスチェックを活用することが有効とされています。

4. 職場で活用できるストレスチェック

企業は組織としてストレス対策を実施し、従業員が安心して健康に働けるよう支えることが重要です。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックの目的は、定期的にストレス状況を検査することで、従業員が自身のストレス状態を把握し、メンタルヘルスの不調を未然に防止することにあります。そして、検査結果を集団分析することによって、職場環境の改善につなげ、従業員の職場におけるストレスを軽減することです。
ストレスチェックを通して従業員のケア、職場環境の改善ができれば、退職者や休職者を減らすことにもつながります。

国はストレスチェックの実施、活用を重視

厚生労働省は「第14次労働災害防止計画」において、2027年までに労働者数が50人未満の小規模事業場でのストレスチェック実施率を50%以上にするとしています。この取り組みにより、2027年までに自分の仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合を50%未満にすることを目標にしています。

ストレスチェック制度とは

厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」の57項目が記載された質問票に労働者が回答して、それを集計・分析することで自分のストレスの状態を把握できる簡単な検査です。メンタルヘルス不調を未然に防ぐ効果が期待できます。ストレスチェックは常時50人以上の労働者を雇っている事業場で2015年12月から年に1回の実施が義務化されています。
(厚生労働省「ストレスチェック制度簡単導入マニュアル」をもとに作成)

ストレスチェックを自社で行う場合のメリット・デメリット

産業医などを選任することは必要ですが、自社でストレスチェックを行うことは可能です。厚生労働省より「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が無料配布、実施後の手順なども公開されています。

ストレスチェック実施の流れの図

自社で行うメリットは、比較的低コストで運用可能なこと、スケジュールを柔軟に決められることなどがあります。一方、デメリットとしては、体制構築の準備や回答の集計、分析の担当者負担が大きいという点があります。
またストレスチェックの結果は個人情報でもあるため、情報の取り扱いなどにも注意が必要です。コストはかかりますが、目的や予算、サポート内容を考慮して、外部のストレスチェックサービスの活用も検討してみましょう。

ストレスチェックを外部委託する場合のメリット・デメリット

ストレスチェックを外部委託するメリットは、短時間で効果的なチェックが可能なことです。外部委託によるストレスチェックサービスは、専門的なツールを活用でき、従業員のストレス状態を短時間で的確に評価できます。一方、外部委託のデメリットはサービスを利用するためにコストがかかることです。特に大規模な組織が頻繁にストレスチェックを実施する場合は、予算を確保する必要があります。

ストレスチェックの課題

既存のストレスチェックは、従業員自身が質問票に主観的な回答をしてしまう点や、データの蓄積や共有ができず管理者が変化に気づきにくいという課題があります。

主観的な回答は不要。「疲労ストレス計 MF100」で測定者本人が感じる疲労感とのズレも把握

ストレスチェック制度は有効ですが、従業員自身が記載するため、どうしても主観的になるという点は否めません。
「疲労ストレス計 MF100」は、自分のストレス心拍の変動から自律神経機能の偏差値とバランスを評価することで、「疲労・ストレス度」を可視化。目に見えないストレスを可視化するため、測定者本人の感じる疲労感とのズレも把握でき、自分の心身の状態への関心が高まります。

また、「疲労ストレス計 MF100」にはWEB上での簡単分析やデータ分析機能があるため、産業医などの管理者、健康経営に取り組む経営者にとって効果の検証がしやすく、職場環境の改善につなげることが可能になります。

疲労ストレス計 MF100とタブレット・スマートフォンの画像

5. ストレスチェックと合わせてできるストレス対策

職場における従業員のストレス対策は、ストレスの原因に応じて具体的な対策を検討することが重要です。従業員のストレスを減らすことで働きやすい職場環境が提供できるようになり、離職率低下を防ぐことにもつながります。また、仕事のパフォーマンスも上がり、企業全体の業績向上も見込めるでしょう。労働環境の改善に向け、以下のストレス対策を実践してみてください。

適切な労働時間の管理と有給休暇の取得促進

仕事の量に関する問題に対しては、長時間労働の削減がひとつの解決策となります。具体的には、労働時間の見直しや残業の削減、有給休暇の取得促進など、従業員のワークライフバランスを改善することが考えられます。また、医師による長時間勤務している従業員への面接指導など、適正な健康管理体制を構築することも必要です。

仕事内容・質(難易度、適性、スキルなど)の把握

仕事の質に関しては、従業員の適性、スキルを把握すること、能力向上のための研修制度を導入することも有効です。これにより、従業員は仕事に必要なスキルを身に付け、業務に対する不安感を軽減できます。

人員配置の見直し

業務によっては、特定の従業員に身体的負荷がかかる、また、精神的なストレスがかかることがあります。このような場合は、対象のスタッフの業務量や業務内容を踏まえ、人員配置の見直しを検討しましょう。
また、企業には従業員のスキルや能力、適性などを考慮したうえで、適切なタスクを与えられるよう配慮することも求められます。職場内で適宜アンケートを採り、従業員にとって業務負担やストレスがかかりすぎていないかをチェックし、ストレスの予防につなげましょう。

ハラスメント対策の実施

理不尽なクレームを受けたり、ハラスメントを受けたりする従業員もいるかもしれません。対策としては、社内で従業員のためのハラスメント研修を実施することが重要です。研修を行う際は、全従業員が参加するよう回数を分けて実施しましょう。研修では、実際に起きたクレームやハラスメントの事例を挙げ、ハラスメントを受けた際の相談窓口について周知したり、シミュレーションをしたりしておくことも重要です。特に、過去発生した事案や経験を踏まえたケーススタディを実施すると従業員の理解がより深まるため、効果的です。また、ハラスメントは、従業員をマネジメントする管理者が加害者となりうるため、管理職向けの研修を実施することも求められます。

定期的な面談やサポート体制

定期的な上司と部下との1対1での面談や部署内でのミーティングを通じて、従業員とのコミュニケーションを強化する方法もあります。部下が上司に相談しやすい雰囲気づくりを行い、問題やストレス要因を共有しやすくしましょう。とはいえ、ハラスメントは直属の上司から受けることもあるため、相談窓口を別に設けることも重要です。また、ストレスを避けることが難しい職種では、管理者が従業員の状態を適切に観察し予防策を講じることが重要です。たとえば、管理者は従業員の業務負担を定期的に観察し、業務の適正な分担やサポートが必要な場合は柔軟に対応します。業務量が増えている場合は、仕事の優先順位を見直し人員の適切な配置を考えます。

6. まとめ

職場の従業員の中には、ストレスを抱え、精神的に疲弊している人がいます。ストレスをため込みやすい人の特徴としては、「完璧主義」「心配性」といったものが挙げられます。また、従業員に「イライラしている」「怒りっぽい」「表情が暗い」「体調が悪そう」といったサインがあると、ストレスが蓄積している可能性があります。ストレスを抱えてしまうと、仕事の生産性の低下や従業員の退職につながる場合があります。その結果、業績低下を招くこともあるため、企業全体の課題として取り組むことが重要です。

該当する人がいる場合は、面談やミーティングの機会を設け、コミュニケーションをとりましょう。ストレスの原因が職場にある場合は、改善できるようサポートすることが重要です。従業員の健康を守り、一人ひとりに適した労働環境を提供するためにもストレス対策を徹底していきましょう。

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