従業員のストレスによる退職を防ぐための人事担当者の取り組みとは?

職場で役立つ疲労とストレスコラム

厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、従業員が前職を辞めた理由として「個人的理由」や「定年・契約期間の満了」を除くと「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」が割合の上位に入っています。「ストレス」という言葉は直接出てこないものの、これは人間関係、労働環境のストレスが離職の要因となる可能性があることを示しています。
本記事では、従業員のストレスによる退職を防ぐために、人事担当者が実施できる取り組みについて詳しく解説します。
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この記事のポイント

  • 仕事や職業生活でストレスを感じることがあると回答した労働者の割合は82.2%。
  • 厚生労働省の調査により職場の人間関係や労働条件がストレスとなって離職に影響することが推察される。
  • ストレスの多様な原因に対処するため、企業全体でストレス管理をする必要がある。
  • ストレス対策は従業員の健康だけでなく、経営デメリットの防止にも寄与する。
  • ストレスチェック制度の導入と効果的な活用が企業にとって重要である。

1. 従業員が抱えるストレスとは?

厚生労働省の「令和4年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によれば、「仕事や職業生活でストレスを感じることがある」と回答した労働者の割合は82.2%でした。
ストレスに感じる主な内容は、「仕事の量」「仕事の質」「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係」が挙げられています。
ここではストレス要因を労働条件や労働時間などの労働環境と人間関係の側面から、説明します。

労働環境

厚生労働省の同調査によれば、36.3%の従業員が「仕事の量」によるストレスを抱えており、27.1%が「仕事の質」によるストレスを抱えていることが明らかになっています。
「仕事の量」に関するストレスの場合、日常的な残業、過酷なノルマが存在するような職場では、従業員は仕事とプライベートのバランスを保つことが難しくなり、疲労やストレスが蓄積してしまうことがあります。また、一部の従業員が過剰な業務負担を抱えると、チーム全体の仕事の効率が低下し、ストレスが増加する可能性があります。運送業の長時間運転など業務上避けられない職業的なストレス管理も重要です。
「仕事の質」に関しては、従業員個人の経験や知識が少なく、仕事に対して焦りや緊張、適性への不安を感じることがあります。また、仕事に求められる水準が高いほどプレッシャーや責任を感じるようになり、従業員は追い詰められた気持ちになることがあります。
このように、労働環境は、従業員のストレスを増加させる原因となる可能性があります。

人間関係

従業員が抱えるストレスのひとつとして、人間関係のストレスが挙げられます。厚生労働省の同調査によると、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)に不安を抱えている人は26.2%、4人に1人が人間関係に悩んでいるという割合です。
特に職場の人間関係においてストレスを抱え込みやすい状況は、コミュニケーション不足やハラスメントなどが挙げられます。たとえば、コミュニケーションが不十分な場合、従業員は自分の役割を把握できなかったり、同僚や上司の発言の意図などを正確に理解できず、誤解や疑念が生まれやすくなったりします。また、職場でのハラスメントが存在する場合、被害者は心理的な負担を感じ、安心感を喪失することがあります。これは従業員の不信感、職場全体の雰囲気を悪化させる要因となり、従業員にストレスを与えることになります。

2. 職場におけるストレス対策の必要性

企業にとってストレス対策は、従業員の健康と安全を守るための重要な取り組みです。ストレスは従業員の心身に影響を与え、仕事のモチベーションやパフォーマンスの低下、人材流出やそれによる在籍従業員への負担増、企業ブランドの低下など、さまざまな経営上のデメリットを生みます。
また、ストレス耐性には個人差があり、従業員の心身の不調に気づかないまま、組織の生産性が落ちているということもあります。
そのため、従業員のストレス対策については組織全体で取り組むことが必要不可欠です。

メンタルヘルス不調により1か月以上の休職、または退職者がいた事業所は13.3%

厚生労働省の「令和4年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によると、メンタルヘルス不調により1か月以上の休業や退職した従業員がいた事業所は13.3%に上っています。休職者が出ると、他の従業員に業務負荷がかかるだけでなく、企業への不信感につながる可能性があり、企業の経営課題となります。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.4%、取り組み内容として最も多かったのが「ストレスチェックの実施」で63.1%です。
企業が安定して経営を行うには、従業員が感じているストレスを客観的に把握することが重要です。

国はストレスチェックの実施、活用を重視

厚生労働省は「 第14次労働災害防止計画」において、2027年までに従業員数が50人未満の小規模事業場でのストレスチェック実施率を50%以上にするとしています。この取り組みにより、2027年までに自分の仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合を50%未満にすることを目標にしています。
このように国は、ストレスチェックの実施により労働者の心身の健康を確保・推進を図ることを重要視しているのです。

ストレスチェック制度とは

厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」の57項目が記載された質問票に労働者が回答して、それを集計・分析することで労働者が自分のストレスの状態を把握できる簡単な検査でメンタルヘルス不調を未然に防止するものです。ストレスチェックは常時50人以上の従業員を雇っている事業場で2015年12月から年に1回以上の実施が義務化されています。
厚生労働省「ストレスチェック制度簡単導入マニュアル」をもとに作成)

3. 職場におけるストレス対策方法

職場における従業員のストレス対策は、ストレスの原因に応じて具体的な対策を検討することが重要です。

適切な労働時間の管理と仕事内容・質(難易度、適性、スキルなど)の把握

仕事の量に関する問題に対しては、長時間労働の削減がひとつの解決策となります。具体的には、労働時間の見直しや残業の削減、有給休暇の取得促進など、従業員のワークライフバランスを改善することが考えられます。また、長時間労働者への医師による面接指導など適正な健康管理体制を構築することも必要です。
仕事の質に関しては、従業員の適性、スキルを把握すること、能力向上のための研修制度を導入することも有効です。これにより、従業員は仕事に必要なスキルを身に付け、業務に対する不安感を軽減できます。

定期的な面談やサポート体制

定期的な上司と部下との1対1での面談や部署内でのミーティングを通じて、従業員とのコミュニケーションを強化する方法もあります。部下が上司に相談しやすい雰囲気づくりをし、問題やストレス要因を共有しやすくしましょう。また、ストレスを避けることが難しい職種では、管理者が従業員の状態を適切に観察し予防策を取ることが重要です。たとえば、管理者は従業員の業務負担を定期的に観察し、業務の適正な分担やサポートが必要な場合は柔軟に対応します。業務量が増えている場合は、仕事の優先順位を見直し人員の適切な配置を考えます。

事前の対策「ストレスチェック」

従業員のストレス対策は、問題点を把握して改善するという事後的な措置だけでなく、事前の管理によって防止することが理想的です。
ストレスチェックを実施することで、従業員自身は自分のストレスの状態・原因を知り、セルフケアのきっかけとすることができます。さらに企業はストレスチェック結果を集団分析することで、気づかなかった職場のストレス要因を知り、職場環境の改善につなげられます。

4. 職場で活用できるストレスチェック

企業は組織としてストレス対策を実施し、従業員が安心して健康に働けるよう支えることが重要です。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックの目的は、定期的にストレス状況を検査することで、従業員が自身のストレス状態を把握し、メンタルヘルスの不調を未然に防止することにあります。そして検査結果を集団分析することによって、職場環境の改善につなげ、従業員の職場におけるストレスを軽減することです。
ストレスチェックを通して従業員のケア、職場環境の改善ができれば、退職者や休職者を減らすことにもつながるでしょう。

ストレスチェックを自社で行う場合のメリット・デメリット

産業医などを選任することは必要ですが、自社でストレスチェックを行うことは可能です。厚生労働省より「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が無料配布、実施後の手順なども公開されています。
自社で行うメリットは、比較的低コストで運用可能なこと、スケジュールなどを柔軟に決められることなどがあります。一方、デメリットとしては、体制構築の準備や回答の集計、分析の担当者負担が大きいという点があります。またストレスチェックの結果は個人情報でもあるため、情報の取り扱いなどにも注意が必要です。
既存のストレスチェックは、従業員自身が主観的なアンケート回答をしてしまう点や、データの蓄積や共有ができず管理者が変化に気づきにくいという課題があります。コストはかかりますが、目的や予算、サポート内容を考慮して、外部のストレスチェックサービスの活用も検討してみましょう。

ストレスチェックを外部委託する場合のメリット・デメリット

ストレスチェックを外部委託するメリットは、短時間で効果的なチェックが可能なことです。外部委託によるストレスチェックサービスは、専門的なツールを活用でき、従業員のストレス状態を短時間で的確に評価できます。これにより、迅速な対応や効果的なプログラムの導入が可能です。一方、外部委託のデメリットはサービスを利用するためにコストがかかることです。特に大規模な組織が頻繁にストレスチェックを実施する場合は、予算を確保する必要があります。

「疲労・ストレス度」を可視化できる「疲労ストレス計 MF100」の活用

ストレスチェック制度は有効ですが、従業員自身が記載するため、どうしても主観的になるという点は否めません。
「疲労ストレス計 MF100」は、自分のストレス心拍の変動から自律神経機能の偏差値とバランスを評価することで、「疲労・ストレス度」を可視化。目に見えないストレスを可視化するため、測定者本人の感じる疲労感とのズレも把握でき、自分の心身の状態への関心が高まります。
また、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に改善や増進に取り組む「健康経営」は短期的に結果が現れづらく、効果を測定しづらいと言われることがあります。
「疲労ストレス計 MF100」にはWEB上での簡単分析やデータ分析機能があるため、産業医などの管理者、健康経営に取り組む経営者にとって効果の検証がしやすく、職場環境の改善につなげることが可能になります。

「疲労ストレス計 MF100」漫然運転の防止など健康経営課題への活用提案

疲労ストレス計MF100とタブレット・スマートフォンの画像

5. まとめ

職場におけるストレス対策は、従業員の健康と安全を守るだけでなく、企業の損失を防ぐためにも非常に重要です。従業員の心身の健康状態が健全であれば離職リスクは低くなり、ストレスをきっかけにした休職、退職を防ぐことが可能です。人事担当者は、ストレスの兆候を早めにキャッチするため、社員の出勤状況や有給取得状況の把握、ストレスチェック導入の推進や実施体制づくり、メンタルヘルスケアを目的とした研修の実施など、企業の課題としてストレス対策に取り組むことが大切です。
また、ストレスチェックが実際効果を生むかは、職場でストレスチェックの結果を相談できる窓口があるか、話しやすい環境があるか、管理者も含めた相互の声かけなど、日頃からコミュニケーションの活性化に取り組んでいることも重要となります。

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