私たちの身体は、外の環境や身体の内側に変化が起きても、生命維持に必要な生理的な機能を正常に保とうとする働き(恒常性)があります。その重要な役割を担っているのが自律神経で、正常に働かないと身体に不調をきたします。
この記事では、自律神経の働きについて解説し、自律神経が乱れることで現れる症状と原因、自律神経を整える方法も紹介します。
この記事のポイント
- 自律神経はアクセルの働きをする交感神経と、ブレーキの働きをする副交感神経からなる。
- 自律神経のバランスが乱れると、倦怠感・頭痛・めまい・不眠など、身体に不調が現れる。
- 不規則な生活・ストレス・季節の変わり目などに、自律神経のバランスが乱れやすくなる。
- 自律神経を整えるには、規則正しい生活・バランスの取れた食事・運動・リラックスする時間をもつことが必要。
1. 自律神経とは?
自律神経は、呼吸、発汗、血液循環、体温調節といった、普段私たちが無意識に行っている働きを調整している神経です。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、これらの神経は全身に張り巡らされています。
交感神経
交感神経は身に危険が及んだときに、命を守るために戦ったり逃げたりするのに必要な機能を高める神経です。強いストレスを感じたときには交感神経が優位になり、心拍数が増加したり血圧が上昇したりします。
交感神経はあらゆる動物がもっていて、肉食動物に襲われそうな草食動物は空腹を感じず、全力で走って逃げるために心拍数を上げて血流をめぐらし、呼吸がしやすいように気道が広がるのです。このような身体の変化が起こるため、交感神経が優位になる時間が長くなると疲労します。
副交感神経
交感神経と逆の働きをするのが、副交感神経です。交感神経が優位になって活動した後、疲弊した身体を回復する働きともいえます。具体的には平常時に副交感神経が優位になり、心拍数が減少したり、血圧が低下したりします。たとえば、食事や排泄は、リラックスした状態でなければできません。身の危険がないと感じたときには副交感神経が優位になり、体にエネルギーを蓄えるために食べて消化を行い、体に不要なものは体外に出し、身体が休まるように働きます。
このように交感神経・副交感神経(自律神経)はいずれも大切で、両者がバランスよく働くことで、健康な身体を維持します。健康な身体の機能を維持するために重要な働きをする自律神経が乱れると、身体に不調をきたします。次にその具体的な症状について解説します。
参考:MSDマニュアル「自律神経系の概要」
厚生労働省「自律神経」
2. 自律神経が乱れているときに出る症状
「身体がだるい」「肩こりや頭痛がする」「眠れない」など、身体の不調を感じて病院で検査をしても「異常なし」と言われるときは、自律神経が乱れている可能性があります。主な症状は次のとおりです。
- 全身の倦怠感
- 頭痛
- 血行不良による肩こり・冷え
- しびれ
- 多汗
上記のような症状があるときは、病院でまず検査をして身体に異常がないか調べる必要があります。検査結果だけを見ると「異常なし」であっても、自律神経のバランスが崩れると、サインとして身体に症状となって現れます。自律神経失調症と診断されると症状の原因を特定し、原因を取り除く環境づくりや生活習慣の改善などを行い、症状の改善を図ります。
参考:日本臨床内科医会 「自律神経失調症」
3. 自律神経が乱れる原因
私たちの身体は、互いに相反する作用をする交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、健康な状態が保たれます。しかし、生活習慣の乱れやストレス、季節の変化などにより、自律神経のバランスが崩れ、さまざまな症状を引き起こします。次に、それぞれの原因がどのように自律神経に影響を与えているか説明します。
生活習慣の乱れ
不規則な生活リズム、睡眠不足、運動不足などは自律神経が乱れる原因になり得ます。
人間は昼行性の生き物です。生物は体内に時計機構をもっており、これを体内時計(生物時計)と呼んでいます。体内時計は、日中は活動し、夜は眠る周期で動きます。そのため不規則な生活リズムや昼夜逆転の生活をしていると、体内時計がうまく機能しなくなります。シフト勤務がある職場は特に、生活が不規則になりがちなので注意が必要です。
自律神経は胃腸にも深く関わりがあり、胃腸の動きを抑制するのが交感神経、活発にするのが副交感神経です。暴飲暴食をすると、内臓が疲労し、交感神経を刺激して自律神経に悪影響を与えます。
運動も自律神経を整えるのに重要です。運動をすることによって、自律神経を整える働きのあるセロトニンとメラトニンの分泌が促進されることがわかっています。そのため運動不足になると、自律神経が乱れやすくなります。座りっぱなしの業務を行っている人は、特に運動不足になりがちなので注意が必要です。
ストレス
ストレスは不安・緊張・心拍数が上がるなど、交感神経が優位になります。ストレスが長期間続くと、通常なら副交感神経優位の休息モードに入るはずの時間帯も交感神経優位の活動モードが続き、自律神経のバランスが崩れた状態になります。緊張が長く続く職種や異動の多い職場などは、特にストレス管理が重要です。
季節の変化
春、秋などの季節の変わり目は気温の変動が大きく、その度に身体を調整する自律神経が働きます。
春は環境が変わる時期でストレスが多くなり、先に述べたとおり自律神経が乱れやすくなる時期です。秋から冬にかけては日照時間が短くなることから、セロトニンの分泌量が減少します。その影響で自律神経が乱れて体調不良を引き起こしやすくなります。
参考:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」
日本成人病予防学会
4. 自律神経を整える方法
自律神経を整えるには、規則正しい生活、運動、バランスの取れた食事が非常に大事です。昼間はストレスなどで交感神経が優位になっているので、夜は副交感神経が働くように、リラックスする時間をつくることが必要です。次に自律神経を整える方法について、解説します。
生活リズムを整える
私たちの体内時計は約25時間周期であるのに対して1日は24時間であるため、この時間のズレを修正しなければ起床・就寝の時間がどんどん後ろにずれてしまいます。そうすると昼間に眠くなって仕事の効率が下がったり、夜寝る時間になると目が冴えて眠れなくなったりします。
これを避けるために、1日のどこかで体内時計の周期を24時間に同期させて、生活リズムを整えることが必要になります。次に紹介するのは、体内時計を1日24時間周期に同期させるためのリセットの方法です。
[朝]
- 規則正しい時間に起床する
- 自然の光を部屋のなかに取り込む
- 朝食をとる
[昼]
- 明るい光を浴びる
- 短時間の昼寝
- ライフスタイルに合わせた運動を(理想的なのは夕方)
[夜]
- カフェインが含まれる飲食物は就寝の5~6時間前に
- 入浴は就寝の2~3時間前に
- 就寝の1~2時間前には、部屋の明るさを落としておく
参考:厚生労働省 『e-ヘルスネット』 健やかな睡眠と休養
軽い運動やストレッチングをする
軽い運動や30分程度のストレッチングは交感神経をあまり刺激せず、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
ストレッチングとは筋や関節を意図的に伸ばす運動のことをいいます。柔軟性の向上やウォーミングアップ効果と関連していますが、これらの効果に加えて、ストレッチングにはリラクゼーション効果があることも明らかになっています。
また、全身の筋を順番に伸ばしていくようなストレッチングの前後で脳波や自律神経活動を調べてみると、自律神経の活動が副交感神経活動を有意に変化させることが明らかとなっています。
参考:厚生労働省 『e-ヘルスネット』 ストレッチングの効果
深呼吸をする
深呼吸は場所を選ばず手軽にできるリラックス法です。呼吸は自律神経にコントロールされており、浅くて速い呼吸は交感神経、深くてゆっくりした呼吸は副交感神経の働きによることが知られています。強いストレスなどで交感神経優位の状態が続いて疲れを感じたときは、ゆっくりと鼻から息を吸って、口をすぼめてゆっくりと息を吐くといった深呼吸をすると、副交感神経の働きが高まりリラックスできるでしょう。
リラックスする時間をつくる
日中は活動的で交感神経優位になっているので、夜はリラックスする時間をつくり副交感神経の働きを促して、自律神経を整えることが大切です。入浴したり、好きな音楽を聴いたり、夜寝る前にリラックスすることは、質の良い睡眠を得られる効果もあります。
- 入浴
お湯に浸かって身体を温めると、副交感神経が優位になってリラックスすることができます。お湯は熱すぎない40℃程度が適温で、心臓や肺に疾患がなければ全身浴で10分程度がおすすめです。
- 好きな音楽を聴くなど、その他のリラックス法
リラックスしたいときに音楽や香りを楽しむのも効果的です。音楽はアップテンポの曲よりも、スローな曲が適しています。香りもスッキリ爽やかなものよりは、優しく落ち着いた香りを選ぶとよいでしょう。
参考:厚生労働省 「知っているようで知らない睡眠のこと」
大阪市 「ええことづくめ!お風呂の健康効果とおすすめの入浴法」
厚生労働省 「こころもメンテしよう」
食生活を改善する
1日3回の規則正しい食事は、自律神経を整えるためには大切なことです。また昼間はストレスを受けやすく、交感神経優位になるとコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールの合成にはビタミンCが必要なため、ストレスが蓄積するとビタミンCの消費が激しくなります。
また、筋肉や神経内ではさまざまな活動が行われるため、消費される体内のビタミン(A・B群・C・Eなど)、ミネラル(カルシウム・鉄・マグネシウムなど)、タンパク質などをしっかり補給しましょう。緑黄色野菜、肉、魚、果物をバランスよく食べることで、必要な栄養素を摂ることができます。
参考:健康管理検定 ストレスホルモン「コルチゾール」の働きとは?!
新潟県:【魚沼】メンタルヘルスシリーズ第4回「自律神経を整えましょう」
5. まとめ
原因不明の体調不良は、自律神経の乱れが関与している可能性があります。企業としては、従業員自身が自律神経の働きに対する理解を深め、生活習慣を見直せるような情報提供を行っていくことが必要です。就寝・起床の時間や1日3度の食事の時間を決める、栄養バランスの良い食事を心がける、適度に身体を動かすなど、生活のリズムをつくる重要性を伝えましょう。職場だけではなく、帰宅後にリラックスすることで質の良い睡眠がとれ、疲労蓄積の予防につながることへの理解を促すことも大切です。
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