ヘリコプターの安全運航は操縦士の疲労管理から
健康経営に『疲労ストレス計』を活用

疲労ストレス計 MF100 
導入事例:セントラルヘリコプターサービス株式会社様

セントラルヘリコプターサービス株式会社
総務部企画管理Gr 衛生管理者 中村裕美 様 /
運航部業務管理Gr 松本東子 様 /
取締役・安全統括管理者 機長 森岡俊勝 様

世の中には「特に疲れる」仕事がいくつもあります。その典型が、ドクターヘリのパイロット。
いつ出動要請がかかるかわからず、いざ出動となれば、直ちに人命のかかるフライトに飛び立たなければなりません。しかもドクターヘリ運航時には、安全を確保しながら最短時間での現場到着を求められます。操縦するパイロットには、かなり負荷のかかる業務です。
そこでセントラルヘリコプターサービス社では『疲労ストレス計』を導入し、パイロットや整備士の疲れを可視化しチェックしています。

セントラルヘリコプターサービス株式会社

パイロットや整備士の疲労状況を疲労ストレス計で見える化することで、導入後5カ月で残業時間を1割削減。

目的:ヘリコプターに求められる安全運航の確保

― 最初に御社の沿革と業務概要を教えてください。

森岡様 弊社は1967年、ヘリコプターの運航業務に携わるエアーリフト株式会社として設立されました。その後2007年に朝日航洋株式会社グループの一員となり、同年セントラルヘリコプターサービス株式会社に社名を変更しています。主要業務は、ヘリコプターの運航と整備、そして教育訓練の3事業です。運航業務ではドクターヘリの運航と、山岳救助や火災消火活動などの消防防災機の運航を受託しています。なかでもドクターヘリについては、日本で初めて導入したのが当社でノウハウも数多く蓄積しており、現在は4つの医療機関の運航を担当しています。

― ドクターヘリの運航は人命救護が目的だけに、責任の重い業務ではないでしょうか。

森岡様 まさに人の命を救うことが使命であり、飛行の安全を絶対に確保しなければなりません。パイロットはもとより、同乗する整備士も、ヒューマンエラーを起こさないよう業務に際しては常に緊張感を求められます。そのため心身ともにベストな状態で業務に臨むのが大前提であり、綿密な体調管理が欠かせません。

― 体調管理は、どのように行われていたのでしょうか。

松本様 以前は勤務に就く前に対面によるチェックを行っていました。基本的には運航管理者が、乗員の健康状態を顔色などに注意しながら目視で確認し、さらに乗員の自己申告も合わせて確認をしていました。疲労管理は基本的に脳の疲労をみるわけですが、その解決策は基本的に睡眠をとることです。

― 安全管理規程に関する行政指導もあったそうですね。

森岡様 ICAO(国際民間航空機関)のガイダンス内容に基づいて、我が国でも航空機乗組員の疲労に関する情報をハザードとして取り扱うことが2017年に義務付けられましたが、疲労を測定する具体的な方策が明確には示されていませんでした。そこで弊社では独自にパイロットや整備士の疲労を客観的に評価・管理するツールを探していました。

課題:疲労状況を「見える化」して正確に把握する

― 『疲労ストレス計』は、どこで知ったのでしょうか。

松本様 前社長がインターネット検索などにより、いろいろ探している中で村田製作所様の『疲労ストレス計』を見つけたと聞いています。疲労を客観的に数値化・見える化できる点、しかもその客観評価が医学的背景のあるアルゴリズムに裏付けられている点に注目したようです。測定が非侵襲で簡易、安静状態でセンサを2分間握るだけで測定できるのも、多忙なパイロットたちにとって大きなメリットとなります。

― 導入するとなると、台数もそこそこ必要ですね。

松本様 そのとおりです。弊社は国内でのヘリコプター運航拠点が複数あり、導入が決まれば各拠点に設置する必要があります。また運航と整備の両部門で疲労を把握しなければなりません。導入時には一度に複数の台数を揃えることになるため、投資対効果の高さも重要な判断基準となります。また使い勝手を考えれば、持ち運びのしやすさも欠かせないポイントです。たまたま導入を検討していた時期が、社内携帯電話の切り替え時期にあたり、スマートフォンと連動して測定データを確認できるのも利便性が高いと評価しました。

― 導入プロセスは、どのように進められたのでしょうか。

森岡様 疲労度を正確に知るためには、各パイロットが同じ条件で測定する必要があります。そこでまず、疲労ストレス管理実施要領の策定から始めました。モニターを何人か募り、測定を何度か繰り返しながら実施要領をきめ細かく詰めていったのです。村田製作所様のご担当の方にもいろいろ相談させていただき、要領がある程度まとまった段階で試行期間を3カ月程度設けています。この間に『疲労ストレス計』の動作確認はもとより、作成した実施要領で現場が混乱することなく計測できるかどうか、きめ細かく試しました。そして本運用を開始したのが2020年の10月です。その際に計測対象者の待ち時間なども考慮して、導入台数を決めています。

効果:導入後5カ月で残業時間を1割削減

― 実際に『疲労ストレス計』導入時の注意点や、実際に使われたパイロットや整備士の方の反応を教えてください。

松本様 こうした機器を使った測定自体が初めてとなるため、測定行為そのものが対象者にとってのストレスにならないよう気を使いました。測定結果に対する反応は、正直なところ十人十色といえば良いでしょうか。結果を見て「思ったとおりだ」と納得する人がいれば、「こんなに疲れてはいないけれどな……」といった反応もあります。

― 『疲労ストレス計』の使い勝手は、どのように評価されているのでしょう。

中村様 「こんなに簡単に疲労度を測れるのか」と、みんな最初は驚きますね。電極のつまみ方なども簡単なレクチャーで理解できるようですし、それも経験者が順次申し送りをして伝えてくれています。スマートフォンでのアプリの使い方なども、お互いに教え合ったりしています。全体的に使い勝手は良いようです。

― チェックリストも使って総合判定をされていると伺いました。

松本様 村田製作所様から紹介していただいた、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストを併用しています。これは対象者に自分でチェックしてもらう問診票です。従って『疲労ストレス計』で客観的な評価を行い、加えてチェックリストで主観的にも評価してもらう。この2つの評価を独自の判定チャートに当てはめて総合的に判断し、疲労度が高い場合の対応を決め、必ず具体的なフォローを行う体制を整えています。

セントラルヘリコプターサービス社で採用している、独自の判定チャート。
縦軸にチェックリストによる問診の判定結果、横軸に疲労ストレス計測定結果の中央値が位置するエリアを取って判定している。
森岡様 少し補足すると前述の疲労ストレス管理実施要領の適用範囲はパイロット、整備士だけではなく全従業員としています。その中で実施要領に則り疲労ストレス計で計測をする該当者は次のいずれかに該当した者としています。
  • 月間の法定外労働時間と週40時間超過勤務時間の合計が50時間を超えた者
  • パイロットについては1暦月、3暦月、1暦年毎に定められた乗務制限時間の80%の時間に到達した者
  • 疲労に関する自己申告があった者
  • 上長が必要と認めた者
実施要領の制定後から現時点でパイロットに該当者は少なく、整備職で残業時間が上記の時間を超えた者が主な対象となっています。

― 測定結果を踏まえた具体的な対応策はどのようにされているのでしょう。

中村様 残業時間が長く対象となった者を測定すると、測定結果がチェックリストでの自己評価と一致する場合があれば、不一致な場合もあります。こうした結果となったときにより正確に判定するためにも、客観評価と主観評価の組み合わせは有意義だと思います。そして総合判断の結果に基づいて上長による面談、さらには産業医による面談などの対応策も用意しています。現状では残業時間による対象者ばかりであるため、管理職が残業を減らすよう業務調整を心がけた結果、全体で1割程度、残業時間が短縮されました。導入後まだ5カ月での成果としては上々だと思います。

― 今後の展開については、どのようにお考えでしょうか。

松本様 ヘリコプターパイロットならではの疲労管理体制を充実させていきたいと考えています。幸い、これまでのところ弊社のヘリコプター運航において、航空事故等の重大なアクシデント等は発生していません。けれども、ドクターヘリの運航では常に100%パーフェクトが求められます。人命救助に関わる責任を完全に果たすためにも、今後もストレス管理をより緻密に徹底できるよう改善に努めていきたいと考えています。

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パイロットや整備士の疲労状況を疲労ストレス計で見える化することで、導入後5カ月で残業時間を1割削減。

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