ヒューマンエラーとは?その発生原因や管理者がとるべき対策を解説

職場で役立つ疲労とストレスコラム

ヒューマンエラーは、人間が起こすミスのことを指します。日常の業務における勘違いやうっかりミスが時には思わぬ事故につながり、損害はもちろん経営に影響を与えることもあるでしょう。ヒューマンエラーはどのような職場でも発生するため、組織全体で原因を把握し、防止策を実施することが大切です。
今回は、ヒューマンエラーとは何か、その発生原因や、ヒューマンエラーを減らす対策について解説します。
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この記事のポイント

  • ヒューマンエラーは、「認知する」「判断する」「行動する」「記憶する」の機能が適切に働かず、ミスや誤りが生じる現象のこと。
  • ヒューマンエラーはどのような職場でも発生するため、組織全体で原因を把握し、防止策を実施することが大切である。
  • ヒューマンエラーは起こした本人だけが問題なのではなく、取り巻く職場環境や設備、周囲の人の影響など多くの要因が含まれる。
  • ヒューマンエラーを防止するためには、人的作業の排除、マニュアル作成、作業環境改善、運用体制整備などの対策が有効である。
  • 体制づくりにおいては、情報共有促進、作業者の理解と協力を強化する必要性がある。
  • 疲労もヒューマンエラーを起こす要因である。従業員の心身の健康の管理・ケアも重要だ。

1. ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、「人為的ミス、間違い」という意味で「人間の判断ミスや失敗によって意図しない結果」が生じることを指します。また、厚生労働省の「生産性&効率アップ必勝マニュアル」によれば、職場におけるヒューマンエラーは、従業員の基本的な認知機能とされている「認知する」「判断する」「行動する」「記憶する」の機能が適切に働かず、業務遂行においてミスや誤りが生じる現象とされています。

ヒューマンエラーの例

  1. 宛先を確認せず、メールを送信してしまい個人情報が流出してしまった
  2. 飲食店でお客様の注文を受け、間違えて覚えてしまい、違う商品を提供してしまった
  3. 細かな操作を覚えていないことから間違った操作をしてしまい、不良品を発生させてしまった

このようにヒューマンエラーはどのような職場でも発生するものです。

2. ヒューマンエラーの種類と要因

ヒューマンエラーの種類の説明フロー、内容は後述の「ヒューマンエラーのタイプと要因」の表をご確認ください

ヒューマンエラーは、「するべきことが決まっている」状況で

  1. 「するべきことをしなかった」

あるいは

  1. 「すべきではないことをしてしまった」

といった人間の行為によって起こる結果ということになります。
ここでは、ヒューマンエラーの種類と原因について詳しく解説します。

ヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーは大きく2つに分類できます。意図しない「ついつい・うっかり型」と意図的にルールを破る「あえて型」です。

出典:厚生労働省「生産性&効率アップ必勝マニュアル」人的ミスの種類

ヒューマンエラーの多くは意図しない「ついつい・うっかり型」で、記憶エラー、認知エラー、判断エラー、行動エラーに分類されます。
記憶エラーは必要な情報を覚えられない、正しく続けられない、思い出せないこと、認知エラーは指示や情報の見逃しや聞き逃しをしてしまうこと、判断エラーは経験不足などで状況に対する正確な判断ができないこと、行動エラーは決められた方法や手順を間違えることに起因します。

「あえて型」は、業務に慣れてきたころ「この程度なら点検を省略しても大丈夫だろう」と行うべき点検をしなかった、規定の作業工程を省いた、手抜きをするなどを指します。

※ヒューマンエラーは上図にように分類できますが、実際のヒューマンエラーはいくつかのエラーが重なったり、関連して起こったりすることがほとんどです。

ヒューマンエラーのタイプと要因

ヒューマンエラーのタイプとなぜそのようなミスが発生したのか、その要因を考えてみましょう。

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ヒューマンエラーのタイプ 要因抽出例(なぜこのようなミスが発生したのか)
ついつい・うっかり型 記憶エラー 覚えていない・思い出せない
  • 情報が覚えにくいのにメモをとらなかった
  • 思い出す手がかりが不足しているのに、うろ覚えのまま作業を続けてしまった
認知エラー 情報量が不十分
  • 提供された情報が不足している、誤っているため正確に情報が伝わっていない
伝達の仕方が悪い、不十分
  • 文字が小さい、表現が不明確、全員に伝わっていないなどコミュニケーション全般の障害
判断エラー 状況理解、予測の困難さ
  • 目的・計画、目指すゴールの共有が不十分で、状況を理解、予測することが難しい
意志決定の困難さ
  • 職場において、評価基準や対応、行動基準などが設けられていない。不備がある
経験不足
  • 新人や経験不足の人のみ業務を進めてしまい、適切な対応がとれない
行動エラー 設備不全、操作性の悪さ
  • 設備のメンテナンスが適切でない
  • 機械の操作がしにくい、器具の配置などが不自然で作業がやりにくい
すべてのエラー共通 注意力不足
  • 長時間の集中が要求される状態や注意を阻害する環境が潜んでいるとやるべき作業に集中できず、エラーの発生を招く
作業環境
  • 職場環境が整備されていない場合、作業効率が低下し、エラーが生じやすくなる
疲労
  • 長時間勤務や不規則な勤務時間は体だけでなく精神的にも疲労が溜まり、集中力の低下やエラーのリスクを増加させる原因となる
あえて型 管理および責任意識が不十分(手抜きの発生)
  • 慣れた作業なので問題ないだろうと慢心して手を抜いてしまう
  • 決まりごとを理解しているが腑に落ちない

出典:厚生労働省「生産性&効率アップ必勝マニュアル」をもとに作成

ヒューマンエラー対策を検討する上での考え方

ヒューマンエラーは人間の「記憶」「認知」「判断」「行動」が適切に働かなかったことにより発生しますが、上表のとおり、エラーを起こした本人だけではなく、取り巻く職場環境や設備、周囲の人の影響など多くの要因が含まれます。
まとめると以下のような要因が考えられます。

  1. 手順書やマニュアル、仕組みなどが不完全であること
  2. 設備や機械などの安全対策が不十分であること
  3. 職場環境が整備されていないこと
  4. 周囲の人とのコミュニケーションが不足していること
  5. 本人の心身が健全な状態でないこと

そのため、ヒューマンエラー対策を行うにあたっては、ミスをした人を責めるのではなく、人的ミスを取り巻く構造を知り、仕組みによってミスを減らす姿勢が重要になります。

3. ヒューマンエラーの対策

ヒューマンエラーをゼロにすることはできませんが、人的ミスを取り巻く構造から問題を認識し、原因を取り除いていく対策をしていけば、ヒューマンエラーを減らすことができます。
人的作業の排除、作業マニュアルの作成、運用体制の改善、作業環境の改善、そして心身の状態の管理・ケアの5つに分けて解説します。

ヒューマンエラーを起こしてしまいそうな業務を減らす(人的作業の排除)

ヒューマンエラーは人が何かを行うことが要因となり起きるミスです。そのため、できるだけ人が行ったり、関与したりする作業をツールやシステムに置き換えていくことが対策になります。
たとえば、飲食店でQRオーダーを導入することで注文ミスの防止、口頭での伝達ミスを防ぐことができます。またツールやシステムの導入で業務の効率化も推進できます。

作業マニュアルの作成

ヒューマンエラーを最小限に抑えるためには、作業マニュアルを作成し、業務工程やルールを明確化することが重要です。マニュアルにしたがって作業を行うことでヒューマンエラーの発生を防ぐことができます。マニュアル作成段階では実際の作業者も参加してディスカッションしながら作成しましょう。実際の作業者が他者とのコミュニケーションを図ることで、頭の中が整理されること、客観的な視点を持つことが期待できます。作業の流れを分解し、ミスしやすい箇所をマニュアル内に注意書きとして落とし込んだりすると効果的です。

運用体制の改善

運用方法の改善としてはミスにつながりそうなヒヤリとした体験や起きたエラーを共有するなども有効です。そのことで同様のトラブルを予知しやすくします。具体的な方法として、注文ミスやトラブルが発生した場合、その原因と対策を詳細に記録します。この情報は従業員全体で共有することで、同じ問題を未然に防ぐ手がかりとなります。
また確認作業をするときは、ほかの従業員とのダブルチェック体制にしたり、チェックする役割を入れ替えたりすることで、一人が見落としてしまっていた確認漏れやミスを発見しやすくなります。

作業環境の改善

ヒューマンエラーが起こる要因は人ではなく、職場や作業環境に問題がある場合があります。特に製造業の現場では、作業環境が整っていないことが原因でヒューマンエラーが誘発されます。作業スペースが狭く、機械が安定して取り付けられていないなどで、作業しづらくミスが発生してしまうなどです。
問題が起きる前に誰もが作業しやすい環境にしておくことが重要です。

心身の健康状態の管理・ケア

他人から気づかれにくく、自分からも言いだしづらい疲労やストレスは、蓄積すると仕事が継続できなくなり、休業や退職につながることがあります。企業にとっては貴重な人材が欠けることになり、在籍従業員への負担も増します。また職場環境も問題視され、企業ブランドが低下するなど、さまざまな経営上のデメリットを生みます。
また疲労は、ヒューマンエラーの発生原因にもなります。長時間労働や勤務体制が厳しい職場で疲労が慢性化しているような場合は、ヒューマンエラーが発生しやすくなり、心の健康状態=メンタルヘルスにも影響します。
常時50人以上の労働者がいる事業場では、年に1回のストレスチェックの実施が義務化されていますが、疲労やストレスは個人差もあり、第三者から分かりづらく可視化しづらいという特性があります。
疲労ストレス計 MF100」は、デジタル技術によりこれまで客観的な評価が難しかった「疲労・ストレス度」をデータ分析のうえ、可視化します。「疲労・ストレス度」が可視化されることにより、従業員の疾病予防・体調管理だけでなく、どの職場に疲労やストレスのもとが潜んでいるかを発見することが可能となります。
職場環境の見直しや改善を早期に図ること、従業員の心身の健康状態を把握し、守ることが疲労によるヒューマンエラーのリスクを減らすことにもつながるのです。

疲労ストレス計 MF100 導入事例

セントラルヘリコプターサービス株式会社様

ヘリコプターの運航には、絶対的な飛行の安全が求められます。ヒューマンエラーの防止、安全運航の確保には、操縦士、整備士が心身ともにベストな状態で業務に臨むことが重要で、綿密な体調管理が欠かせません。
セントラルヘリコプターサービス株式会社様では、「疲労ストレス計 MF100」の導入により操縦士、整備士の疲労状況を「見える化」し、把握することに成功しています。導入以前は、勤務前の面談によるストレスチェックが行われていましたが、「疲労ストレス計 MF100」の導入により、より客観的かつ効率的な疲労管理が可能になり、導入後5か月で1割の残業時間を削減することに成功しました。

4. まとめ

ヒューマンエラーは行動する人の経験値、不注意や慣れという直接人間に関わるものだけでなく、周囲の作業環境や運用体制、作業マニュアルの不備や欠陥など、さまざまな要因によって引き起こされます。組織や作業環境などの問題を事前に改善し、明確な指針や手順を整備したり、ヒューマンエラーが起きやすい業務をツールやシステムに置き換えたりすることで、ヒューマンエラーの発生を予防できます。組織全体でヒューマンエラーを防ぐ工夫を行うことで、事故防止や業務の効率化につながるでしょう。

目に見えない疲労を可視化できる「疲労ストレス計 MF100」

疲れが蓄積すると身体の不調が起きやすくなったり、記憶力や集中力が低下したりすることも起こります。疲労はヒューマンエラーの要因となり、ミスや重大な事故につながることもあります。しかし疲労のサインは自分では気がつきにくいものです。
「疲労ストレス計 MF100」は、自分のストレス心拍の変動から自律神経機能の偏差値とバランスを評価することで、「疲労・ストレス度」を可視化。目に見えないストレスを可視化するため、測定者本人の感じる疲労感とのズレも把握でき、個人の体調管理だけでなく、企業が従業員の健康を守るためのデータとして活用することが可能です。

疲労ストレス計 MF100とタブレット・スマートフォンの画像

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